Skip to content
アルパカ プレス | IT・AI・ゲーム・動画制作ブログ ロゴ
Go back

Chrome Built-in AI(Gemini Nano)で利用規約チェックを試してみた!

最近、ネット通販やサブスク契約に関するトラブルを目にすることが増えました。

利用規約をよく読まずに申し込んでしまい、

  • 定期購入だった
  • 解約期限があった
  • 返品できなかった

と後から気付くケースも少なくありません。

そこでふと思いました。

Chrome Built-in AI(Gemini Nano)だけで利用規約をチェックできるのでは?

ChromeのBuilt-in AIはローカルで動作するため、APIキーも不要です。利用規約のような少しセンシティブな内容を扱うには面白い選択肢に見えました。

今回は実際にChrome拡張を作りながら、Gemini Nanoで利用規約チェックがどこまでできるのか検証してみました。

Chrome Built-in AIとは

Chromeには Built-in AI と呼ばれる仕組みがあり、ブラウザ内でAIを利用できます。

今回使用したのは Prompt API です。

特徴としては、

  • APIキー不要
  • 外部サーバー不要
  • ローカルで動作
  • Chrome拡張から利用可能

といった点があります。

個人情報や契約内容を扱う用途では魅力的です。

作ろうと思ったもの

今回作ったのは、利用規約や契約条件をチェックするChrome拡張です。

仮に「契約まもる君」と呼ぶことにします。

ページ内の利用規約を読み取り、

  • 解約条件
  • 返品条件
  • 個人情報の取り扱い
  • 免責事項
  • 管轄裁判所

などを抽出できないか試しました。

最初の結果は悪くなかった

実際に利用規約を読み込ませると、

  • 定期購入
  • 解約条件
  • 返品条件

など、それらしい項目は抽出できました。

最初は

意外といけるかもしれない

と思いました。

最初の課題

最初は、かなり曖昧な回答が目立ちました。

たとえば、条文には具体的な返品期限が書かれているのに、

期限や手続きが明確でない場合、希望通りに手続きできない可能性があります。

のように、本文の内容と少しずれた一般論が返ってくることがありました。

また、他にもこんな問題点が……。

  • 「確認しましょう」で終わる
  • 本文に書かれていないリスクを推測する
  • 重要そうに見えるが具体性がない
  • 引用はあるが、説明が浅い

利用規約チェックでは、本文に書かれた条件を具体的に拾う必要があります。

そのため、単に「注意点を教えて」と聞くだけでは、実用には少し厳しい印象でした。

プロンプトを改善した

そこで、プロンプトをかなり細かく指定してみました。

特に意識したのは、以下の点です。

  • チェックする観点以外は回答に含めない
  • 規約に明記されていない内容を推測で書かない
  • 「確認しましょう」「把握しましょう」のような一般的な促しで終わらせない
  • messageには、本文に書かれた不利になり得る条件そのものを書く
  • 「明確に記載されているか」のようなメタ確認を出さない
  • 不利になり得る理由は、法的判断ではなく消費者目線で書く
  • 根拠となる本文の短い抜粋を必ず入れる
  • 出力はJSON配列に固定する

このように、出してほしい内容だけでなく、「出してほしくない内容」もガチガチに明示してみました。

改善後の結果

Gemini Nano回答

プロンプトを改善すると、かなり回答がマシになりました!

たとえば、解約期限については次のように抽出できました。

次回お届け予定日の7日前までに連絡

理由:

7日過ぎると次回の発送と請求が発生

引用:

第9条(オトク継続便の内容変更、お休み、中止) お客様がその内容(お届けの時期、対象商品、数量、お届け先の住所など)の変更、お休み、中止などを希望する場合には、次回のお届け予定日の7日前までに、別途当社が定める方法により、その旨を当社に

送料についても、具体的な条件をしっかり拾えました。

通常価格5,000円(税抜)以上なら当社負担

理由:

5,000円以下の場合、お客様が送料を負担

引用:

第3条(送料) 当社商品のお届けにかかる送料は、以下のとおりとします。 ①オトク継続便をご利用中のお客様による注文の場合または一度の注文で通常価格の合計額が5,000円(税抜)以上となる場合:当社負担 ②前号に定める場合以外:350円

個人情報の共同利用についても、注意点として抽出できました。

サントリーグループ間で個人情報を共有

理由:

情報提供の範囲が広くなる可能性、目的によっては不適切な利用の懸念

引用:

III.データ連携 1.共同利用 サントリーグループは、お客様情報を、以下のとおり共同して利用いたします。 ①共同して利用される情報の項目 前記Ⅰ「取得する情報およびその取得方法」記載の情報 ②共同して利用する者の範囲 サントリーグループ

規約変更についても、次のような出力になりました。

変更は当社都合で可能

理由:

お客様の意に反する変更が一方的に行われる可能性がある。

引用:

第29条(規約の変更) 当社は、お客様一般の利益に適合する場合のほか、法令の変更、監督官庁の指示、お客様のニーズの変化、経営状態の変化、金融・経済・社会情勢などの状況の変化その他の相当な事由があると認める場合、本規約の各条項を、民法の定

このあたりは、以前よりも本文に書かれた条件をかなり具体的に拾えていました。プロンプトの効果てきめんです。

分かったこと

今回の実験で分かったのは、Gemini Nanoはプロンプトの書き方にめちゃくちゃ影響されるということです。

雑に聞くと、どうしても曖昧な一般論になりがちです。

一方で、以下を強く指定すると、出力はかなり改善します。

  • 何を見るかを限定する
  • 何を出してはいけないかを明示する(超重要)
  • 本文に書かれた条件を書くように指定する
  • 推測を禁止する
  • 引用を必須にする
  • 出力形式を固定する

特に「確認しましょう」型の回答を禁止したのはかなり効果がありました。

Gemini 3.5 Flashの回答

Gemini 3.5 Flashの回答

比べるのがちょっと可哀想ですが、Gemini 3.5 Flashだと、かなり適当に指示を出しても精度が全く違います。以下がその時の回答です。

サントリーウエルネスの利用規約(ポップアップ表示されるもの)において、一般的なネット通販と比較して「利用者がうっかり見落とすと不利(あるいは負担)になりやすい項目」をまとめました。

違法な内容ではありませんが、契約する上で特に注意すべきポイントは以下の4点です。

1. 「定期お届けコース(オトク継続便)」の解約期限

  • 注意する項目: 変更や終了(解約)の連絡は、「次回お届け予定日の7日前まで」に行う必要があります。
  • 不利になり得る理由: 7日前を過ぎてしまうと、その次の回まで商品が自動的に発送され、代金が発生してしまいます。「いらなくなったら直前に止めればいい」と思っていると、1回分余計に支払うことになります。

2. 返品・交換の送料は「お客様負担」

  • 注意する項目: 商品到着後7日以内であれば返品可能ですが、「返品または交換に必要となる費用(送料など)はお客様の負担とする」と定められています。
  • 不利になり得る理由: 「体に合わない」「イメージと違った」という購入者都合の返品の場合、返送するための送料は自己負担になります。通販によっては「返品送料無料」を謳うところもありますが、ここでは自己負担になるため注意が必要です。

〜 中略 〜

💡 総評とアドバイス

大手企業ということもあり、法律(消費者契約法など)に違反するような極端に不当な条項(「いかなる理由でも一切返品不可」「損害をすべて消費者に負わせる」など)は見当たりません。

ただし、「定期便を止めるなら7日前まで」「返品の送料は自分持ち」の2点だけは、実際にお買い物をする上でダイレクトにお財布に関わってくる部分ですので、しっかり頭に入れておくことをおすすめします。

やっぱり上位モデルは賢いですね。ただ、Nanoも追い込み方次第でここまで近づけるのは面白いところです。

まだ気になる点

ただし、完全に満足できる精度ではありません。

改善後も、理由の部分では本文から少し踏み込んだ説明(モデルの解釈)が混ざることがあります。

たとえば、規約変更についての

お客様の意に反する変更が一方的に行われる可能性がある。

という理由は、消費者目線では非常に自然ですが、条文そのものをそのまま言い換えたものではありません。

また、引用が途中で切れてしまう場合もあり、根拠確認にはまだ人間のチェックが欠かせません。

現時点の評価

Gemini Nanoは、利用規約チェックを完全に丸投げできるほどの精度ではまだありません。

ただ、プロンプトを丁寧に設計すれば、利用者が見落としやすい条件を拾う「補助ツール」としては十分に使える可能性があります。

重要なのは、AIに自由に要約させるのではなく、チェック観点と出力ルールをかなり狭く指定してあげることだと感じました。

まとめ

今回の検証では、Gemini Nano単体で利用規約の内容を正確に読み解くのはまだ難しいと感じました。

一方で、ローカルで動作するAIとしては非常に面白く、今後モデル性能が向上した際には再度試してみたいテーマです。


関連記事